盲導犬パピーを預かってから、彼らが生まれてから引退するまでの一生に興味がある一福です。将来は盲導犬トレーナーになりたいとさえ思っています。
さて。
今回、私がパピーウォーカーを始めるにあたり、盲導犬の一生について調べました。盲導犬になるために生まれてきた子犬と、その子犬たちに関わる人たちの生き様を分かりやすくまとめましたので、最後までゆっくりご覧ください。
繁殖犬ボランティアさんとの生活(誕生~2ヶ月)
「やったー!元気な子犬が生まれたっ!」
ぼくたちはラブラドール・レトリバー。目の不自由な人たちのために働くために、盲導犬になるために生まれてきた犬だ。
ここは「繁殖犬ボランティア」さんのお家。
とっても優しいお母さんと、可愛いお姉ちゃん、そして大きなお父さんがいるんだよ。
お姉ちゃんは犬が大好きで、ぼくたちをとても可愛がってくれた。たくさん一緒に遊んだし、トイレのしつけもしてくれたよね。
ぼくたちは毎日、お姉ちゃんと楽しく過ごしたんだ。
でも、ある日突然、お別れのときが来た。
ぼくたちは「パピーウォーカー」さんという、ぼくたちを育ててくれる人の家にそれぞれもらわれていくんだって。
明日から、兄弟みなバラバラになるんだって。
お母さんともお別れなんだって。
もちろんお姉ちゃんとも。
「あなたたちは盲導犬になる準備が始まるのよ。頑張っていらっしゃい。」
お母さんはぼくたちに、そう言って聞かせた。
お姉ちゃんは涙をこらえて、僕たちを送り出してくれた。
「ばいばい私のパピーたち。可愛がってもらうんだよ!大好きだよ!!」
僕たちは寂しかった。お姉ちゃんもとても寂しそうだった。
パピーウォーカーさんとの生活(2ヶ月~1才頃)
「パピーウォーカー」さんのお家では、おじさんとおばさん、それに3人の兄妹がぼくを迎えてくれた。
そう!ここは一福さんのお家だ。
今日からあなた達がぼくの家族「育ての親」になるんだね。
犬が大好きな一福さん家族は、直ぐにぼくのことを愛してくれた。ぼくも5人が大好きになった。
5人はたくさん散歩に連れてってくれた。朝はおじさんが、夕方はおばさんが散歩に連れてくれるんだ。
おじさんとの早足な散歩も、おばさんとおしゃべりしながらの散歩も、ぼくはどっちも大好きだった。
毎日同じ道を歩いても、なぜか景色が違って見えた。
近所のみんなも、ぼくを可愛がってくれたんだ。
兄妹のお友達の間でも、ぼくは人気者だった。
一福さん家族と過ごす毎日の中で、ぼくは人と暮らすことは楽しいと思えるようになった。人が大好きになった。
ぼくが少しお兄さんになった頃、また別れの時が来た。
ぼくが立派に人の役に立てるように、盲導犬になるために訓練を受けに行くんだ。
一福さんたちは、本当に寂しそうだった。
ぼくも寂しかった。
別れたくなかった。
でも、ぼくは盲導犬になるんだ!
人を助けるお仕事がしたい!
5人は涙をこらえて、ぼくを送り出してくれたんだ。
「元気でね!立派な盲導犬になるんだよ!」
訓練士さんとの訓練(1才~2才頃)
ぼくは「訓練センター」にやってきた。これから盲導犬になるため、僕たちはここで訓練を受ける。
小さい時に別れた兄弟も、全員揃っていた♪とても心強い!
一緒に立派な盲導犬を目指そうっ!
ぼくはそこで「訓練士さん」に出会った。訓練士さんは毎日、毎日、ぼくと遊んでくれた。ボールを取ってくる遊びや、ロープのひっぱりっこ。ぼくの好きな遊びを通して、色んな事を教えてくれたんだ。
待つ。
止まる。
曲がる。
階段を登ったり、ボタンを押す事も教えてくれた。
ぼくは毎日、楽しくってしょうがなかった。
訓練士さんに褒めてもらうことが嬉しくってしょうがなかった。
訓練士さんはぼくのことが大好きになって、ぼくも訓練士さんが大好きになった。
こうやってぼくはたくましく成長し、立派な盲導犬となる日がやってきたんだ。
ほら、その印にハーネスを着けたんだ。
これで僕たち盲導犬と人は繋がるんだ。
もうすぐ訓練士さんとお別れしなければならない。
ぼくにとっては3度目のお別れだ。
訓練士さんは寂しかった。
ぼくも寂しかった。
でもこれは別れじゃない。
盲導犬としてのスタートだ!
訓練士さんは笑顔でぼくを送り出した。
「立派な盲導犬として、お役に立てる様に頑張れ!」
目の不自由な方との生活(2~10才頃)
ぼくを待っていたのは、目の不自由なおばさんだった。
おばさんはあんまり犬が好きじゃなかった。
でも、これからはぼくと一緒に歩いて行くことになる。
ぼくはおばさんをジッと見つめた。
おばさんも、ぼくを見つめている様な気がした。
見つめて、見つめて。
おばさんとぼくは見つめ合った。
ぼくはおばさんと一緒に歩いた。
毎日、毎日。雨の日も、風の日も、そして茹だるように暑い日も。
おばさんはとても嬉しかった。
だって目が見えていた頃を思い出したんだから。
目が見えていた時のように、風を切って歩けるんだから。
ぼくはおばさんの目になったんだ。
気がつけば、おばさんはぼくのことを大好きになった。
ぼくもおばさんのことが大好きになった。
すると、おばさんはもっともっとぼくを愛してくれた。
大好き。大好き。大好きだよって。
でもある時、おばさんがぼくに言ったんだ。
「私の目になってくれてありがとう!本当に感謝してるわ」
ぼくとおばさんに、お別れの時が来たらしい。
ぼくはまだまだ歩けるのに。
おばさんのお役に立てるのに。
なのに、もうお別れなの?
ぼくたち盲導犬はまだ元気なうちに、盲導犬のお仕事を引退するんだ。
おばさんは寂しかった。
ぼくも寂しかった。
おばさんは涙を溜めた目でじっと僕を見つめ、そして笑ってこう言ってくれた。
「ありがとう!これからはゆっくり過ごしてね!」
リタイア犬ボランティアさんとの生活(10才~)
盲導犬を引退したぼくは、「リタイア犬ボランティア」さんの家に引き取られた。
そこにはおじさんとおばさんがいて、ぼくとゆったりのんびり過ごしてくれた。
好きな時に遊んで、好きなだけ眠った。
ぼくはだんだん年をとって、身体も少しずつ弱ってきた。
だんだん起き上がるのが難しくなって、ぼくは眠っている時間の方が長くなってきた。
年老いて痩せてしまったぼくの隣には、いつもおじさんとおばさんが一緒だった。
「いい子だね」って、いつも優しく撫でてくれた。
こんな時、ぼくはいつも同じ夢を見るんだ。
生まれた家のお姉さん。
育ての親の5人の家族。
訓練士さん。
一緒にたくさん歩いたおばさん。
最後まで隣に居てくれたおじさんとおばさん。
可愛がってくれた近所の人や子供たち。
ぼくが一緒に過ごした人たちが、笑顔でぼくを取り囲んでる夢だ。
みんな笑ってる。
ぼくも笑ってる。
そんな夢を見ながら、ついにぼくは永遠の眠りについた。
大きな身体を横にしたまま、もう二度と起き上がることはなかった。
ぼくはみんなのことが大好きだよ。
ぼくの事を大好きでいてくれてありがとう。
皆の心の中に、ぼくはずっと生き続ける。
これからも、ずっとずっと一緒だ。
「ありがとう。またね!」
まとめ
盲導犬の一生、いかがでしたか?
- 繁殖犬ボランティア
- パピーウォーカー
- 訓練士
- 目の不自由な方(盲導犬ユーザー)
- リタイア犬ボランティア
盲導犬がたくさんの人たちの愛に触れ、守られて、生き抜く様子をまとめました。
盲導犬の一生は本当に多くの方の愛に支えられています。盲導犬に直接関わる方はもちろん、盲導犬のために寄付してくださる方もそのうちの1人です。
私が関わることになる盲導犬パピーも、きっと私たちのことを忘れないでいてくれる。私たちの愛情を力に変えて生き抜いてくれる。
私が盲導犬パピーのためにできることは、全力で愛することだけだと分かりました。盲導犬の子犬の一生を案ずるなら、与えられた時間を全力で愛してあげたいと思いました。
皆さんの愛を心に生き抜く盲導犬の一生。少しでも盲導犬について知って頂けたら嬉しいです。